ジェームズ・ボンド原作の1作目を映画化。ボンドの若い頃の事で、昔の話に戻るのかと思ったら、さすがに時代は今。
 冷戦の時代を今更描いても理解不能の世代が多いから、当然か。。悪役ル・シッフルは、各国のテロ組織から預かった金でマネー・ゲームをするファンドの経営者になっている。ストーリーや人物配置はほとんど原作通りでありありながら、現代の話にスマートに描いた脚本のポール・ハギス、さすが。

 新ボンドのダニエル・クレイグだが、歴代ボンドの中ではスタント能力が高い。ほとんどを自身の肉体でこなした。走る、跳ぶ、殴る、蹴る。銃器の使用より肉体を酷使する。傷だらけになり、血を流し、毒を盛られれば危篤状態に陥る。いくら強靭でも、あくまで人間の能力を超えないリアルさにこだわったアクションは皮膚感覚の痛みを伴う。痛そう~。
 そして、007に昇格したばかりの、功名心にはやる向こう見ずな若造という感じがよく出ている。
 強いだけではなく大切なときにそばにいて安心させてくれる男の優しさを持ちながら、情報員としての過酷な道を選ばざるを得ない。そんな機微も、上手く表現している。

 映画として、最高の出来だった。久しく忘れていた、タイトルロールで期待感が盛り上がり、血湧き、肉躍り、期待にワクワクする思いが持てた。テーマソングも、いかにも007らしくて印象に残った。今でも歌える『ゴールドフィンガー』に、近いイメージを、僕は持った。衝撃のラストシーンも、脳裏に刻まれ、これから007はどう生きて行くのだろうかと続きが観たくなる。

 本当に、久々に映画らしい映画を観た、感じ。
 真剣に恋愛をしたボンドの姿にも、心が動いた。切ない~。。

 これからどうなるんだろう。またシリーズが続くのかな。1作目が力強い印象だったので、新ボンドには今後がキツイかも。

 一部では、O(オー)の出てこないと言うことで、不評でしたが…。それこそ次作に期待?

 この映画は12月30日の年の瀬に観ました。有楽町の「サロンパス ルーブル丸の内」で。とても混んでいて満席だったけれども、大きなスクリーンの大きな映画館で観られて良かった。多くの人と共通の時間を持ちながら映画を味わうのも、感動の体験。
 やはり映画は、映画館で! 

イアン・フレミング, 井上 一夫
007/カジノ・ロワイヤル 【新版】