ナイロビの蜂


 テレビなどのCMを見ると、まるで恋愛ドラマのように宣伝している。しかし間違い。 
 原作はジョン・ル・カレ。冒険・ミステリの作家である。

 講演会で知り合った二人。庭いじりが趣味の外交官と、女性活動家のあいだに恋が芽生え、結婚した。2人は赴任先のナイロビに渡るが、妻が襲撃され、惨殺される。妻はスラムでボランティアに没頭していた。そして新薬開発のために製薬会社がアフリカ人を治験材料にしている事に気づき、証拠を集めている途中だった。
 愛した妻の謎の死から、夫は妻の行動を辿っていく。なぜ妻は死ななければならなかったのか。男性の影がある。浮気をしていたのか。陰謀があるのか。
 真実を知らなければならないという強烈な思いで夫は行動する。そして、妻の死の背景にある壮大な陰謀を調査していくうちに、自分がいかに妻を愛し、妻が自分をどれほど愛していたかを知る。


 ナイロビという生活に厳しい土地が露わになる。本物のスラムで撮影されたシーンの手持ちカメラが、アフリカの土埃や風まで運んでくるようだ。
 妻の真実を追う夫の目線で、観る者をぐいぐいと引っぱっていく。
 
 妻・テッサ役のレイチェル・ワイズがとても魅力的。アカデミー賞助演女優賞とゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞したのも納得。妊婦姿の入浴シーンがあるけれど、ワイズは当時本当に妊娠していたので、あのお腹のふくらみは本物。


 物語の核となるミステリと、夫婦の愛、それに加えてアフリカの厳しい現状なども訴えてくる。
 骨太で考えさせられる、少し不思議なインプレッションが残る映画だった。
 音楽も印象的。永く忘れないだろう。
 久しぶりに上質なミステリを観た。

 

ナイロビの蜂2


ジョン ル・カレ, John Le Carr´e, 加賀山 卓朗
ナイロビの蜂〈上〉
ジョン ル・カレ, John Le Carr´e, 加賀山 卓朗
ナイロビの蜂〈下〉
日活
ナイロビの蜂